大会の告知以外の記事を書くのはいつ以来でしょうか。今回はぐんそーさん企画の種族統一 Advent Calendar 2020への寄稿記事です。他に寄稿されている方々の記事同様、私もエルレイド統一の解説をしたかったのですが、思えばここ半年エルレイド統一で思うような結果を残せていない不肖アット、語るには力が不足していると判断しました。そこで今回は、統一に限らない、エルレイドを取り巻く第八世代の環境について、個人の感想や見解を織り交ぜつつ少しだけしたためたいと思います。
◆エルレイドのとくせいはせいしんりょくではない
エルレイド基本情報
タイプ エスパー/かくとう
たかさ 1.6m
おもさ 52.0kg
とくせい ふくつのこころ
かくれとくせい せいぎのこころ
良くある勘違いですが、せいしんりょくはメガエルレイドのとくせいです(そもそもメガエルレイドのせいしんりょくも認知度が低く、USM期のレーティングバトルでは何度もねこだましをされたものですが)。ふくつのこころだっていかくを無効にする効果があっても良さそうですが、世界はそう都合がいいものではありません。もとよりエアスラッシュはこうかばつぐんであり、あくのはどうはあくタイプ、ダイマックスの登場によってねこだましの採用率は(少なくともシングルバトルでは)大きく下がりました。多くのエルレイドは、せいぎのこころで育てられていることでしょう。
◆ひこうわざ天国に立ち向かえるか
ダイマックスが登場し、多くのポケモンは強化されたといっても差し支えないでしょう。メガシンカと違い、ランクマッチではすべてのポケモンがダイマックスすることができます。とつげきチョッキをもっていても、こうげき以下能力ランクを上げることができるようになりました。HPが(ほとんどの場合)2倍になるため、耐久力が純粋に上がりました。いくつかの天候に関係するとくせいを持つポケモンは、ターンをほとんど無駄にすることなくその恩恵に与れるようになりました。ではエルレイドは?残念ながら、良好な関係を築けているとはいえないでしょう。
最も強力なダイマックスわざを万人に尋ねれば、そのほとんどがダイジェットと口を揃えることは明白です。不幸なことに、エルレイドはかくとうタイプであり、今の環境はまさしく逆風と呼べるかもしれません。そらをとぶしか有用なぶつりひこうわざが存在しないほとんどのランドロスは、USM期ではメガエルレイドの役割対象でした。ひこう打点のいりょくが75止まりだったUSM期のトゲキッスはもういません。ほとんどのポケモンが、いりょく130のひこうわざを撃てるのです。そもそも、ダイジェットが強力であるが故に、数多のポケモンがひこうわざを採用しだしたことが問題とも言えるでしょう。もちろんエルレイドもつばめがえし、エアスラッシュ(!)を元にダイジェットはできますが、それを補ってなお余りあるデメリットが立ち塞がっているのです。
◆こうげき上昇?それって美味しいの?
これはどくタイプにもいえることですが、タイプ一致のダイマックスわざがその追加効果によって割を食っている現状があります。こうげきやとくこうのランク補正を、攻撃しながら上昇させられるのは確かに強力ですが、デメリットとして、ダイナックルとダイアシッドはいりょくが低く設定されています。命中不安を補ったりそれを生かす方法は剣盾期になって増えましたが、必中の代わりに 25もいりょくを下げられたのではたまりません。エルレイドはイカサマを等倍で受ける、今のランクマッチ唯一のかくとうタイプだというのに......多くのポケモンが新規取得したはどうだんも、ダイマックスとの相性の悪さにより、日の目を見ることはほとんどないでしょう。
◆活用できないフィールドは相手に利する
エルレイドはミストフィールドを覚えます。もちろんそのまま使う機会はほとんど訪れないでしょう。しかし勝手に展開されるフィールドの強さは、カプ達をみれば一目瞭然です。エルレイドはダイマックスわざによってすべてのフィールドを展開できますが、特にサイコフィールドとエレキフィールドはその強さをエルレイドに示してくれるでしょう。高くないわざのいりょくを補完してくれるのみならず、かげうちやふいうちから身を守れる、あくびでサイクルを回されることを防げる、などの追加効果も魅力的です。ミストフィールドも、おにびをもらいやすいエルレイドとの相性は抜群です。
ただし、エルレイド自身もかげうちやおにび、さいみんじゅつを使う機会が多いポケモンであることは注意しなければなりません。苦し紛れのダイサイコで後続が機能不全に陥ったのでは意味がないのです。
◆ダイマックスかく恨めしき/愛おしき
剣盾期では、いかに相手のダイマックスターンを浪費させるかという点に重きが置かれることが多いでしょう。それは転じてトリックルームやフィールドのターンを枯らすという行為につながります。何が言いたいか、つまりここでも搦め手を使うポケモンが割を食うということです。みがわりやこらえるとなどの時間稼ぎにうってつけのわざを採用したポケモンが増えれば、トリックルームで微妙なすばやさを誤魔化したりすることが難しくなります。せっかくトリックルームを覚えても、それがダイジェットに対抗しうる絶対的な回答にはならないのです。みちづれを透かす手段をほとんどのポケモンが持ち合わせてしまっては、そもそも択にすら持ち込めません。元よりみちづれはダイマックス相手には無意味ですが。
ダイマックス憎しは、おそらくすべてのポケモントレーナーが感じていることであり、同時にその恩恵も遍く享受していることでしょう。エルレイドでも、それを最大限にあずかろうと思案するのは当然です。
エルレイドのサブウエポンは火力があまり高くありません。ぶつりゴーストに至ってはいりょく40止まりです。エルレイドはぶつり耐久が高くありません。ぼうぎょの種族値は65。これはヒメンカと同じレベルです。これらすべてを一気に解決できるのがダイマックスであり、すなわちこれは、剣盾期で最も研究の余地がある分野だと確信しています。抜きエースとしての素養を十分に備えたエルレイドは、良い面だけを見れば、大きく強化されたでしょう。
初手ダイマックスで無理矢理エースを通したり、本来アタッカーたり得ないポケモンで奇襲をかけるようなこともできるでしょう。誰でもエースたり得るわけですから、駆け引きの要素を(一般的な意味で)全てのポケモンに与えることに成功したと考えれば、もちろん悪いものではありません。
◆耐え難きを耐え......
エルレイドはダイマックスのターンを浪費させる手段に長けています。さいみんじゅつ、おんねん、 こらえるが有名どころでしょう。こらえるイバンからおんねんで後続につなぐもよし、さいみんじゅつとからぶりほけんを併せるもよし。ダイマックスによって抜きエース性能を高めたポケモンで勝つことが一般的になってきたのならば、それにあわせて調整をほどこす。高い柔軟性がエルレイドの武器の一つなのです。
その点では、ゆうわくが使えなくなってしまったのは大きな痛手でしょうか。メロメロをしにきた不埒なポケモンを捕まえて、あかいいとゆうわくで逆に起点にする、なんてのはエルレイドの十八番だったのですが。
◆念願の回復補助わざ......?
では改めて、剣盾で新たに習得できたわざを少しみてみましょう。
攻撃わざ
サイケこうせん、メガトンパンチ、メガトンキック、ソーラーブレード、リベンジ、エアスラッシュ、きしかいせい、はどうだん、エナジーボール、ワイドフォース、トリプルアクセル
補助わざ
いのちのしずく、コーチング
この中で特に有用なものは、リベンジ、エアスラッシュ、きしかいせい、エナジーボール、ワイドフォース、トリプルアクセルでしょうか。残念なことに、ねがいごとをサーナイトに譲ってもらうことはできませんでした*¹。ねがいごとは次のターンに最大HPの1/2を回復しますが、いのちのしずくは1/4。もちろん運用方法は大きく違うでしょうが、いくら即時効果とはいえ、残念ながら型落ちと言わざるを得ません。とはいえ、エアスラッシュとエナジーボールでとくしゅ型のわざ範囲が広がりましたし、トリプルアクセルによってカイリューやミミッキュをなんとか相手取ることができるようになりました。
エアスラッシュの習得は、何も攻撃面での強化に留まりません。エアスラッシュ、マジカルシャイン、シャドーボールをふういんされたダイマックス権の無いトゲキッスに負けることはないでしょう。
また、こらえるのわざレコード化は多くのトレーナーが驚いたのではないでしょうか。新規習得わざではないものの、古の戦術として名高いこらきしやこらイバの隆盛を見れば、対戦環境に与えた影響が少なくないことは一目瞭然です。とくせいパッチの登場とあわせて、かくれとくせいと過去作限定わざの両立が可能になったことは、革命的とすら言えます。
コーチングはダブルバトルでしか効果を発揮することができないわざですが、ワイドガードやファストガード、サイドチェンジ、トリックルームなど、ダブルバトルで有用な補助わざが元々豊富なエルレイドにとっては、パーティの中に新たな活躍の場を増やす可能性となるでしょう。
わざの効果が変更されたことで、テレポートも一考の余地があるわざになりました。トリックルームの存在はありますが、みちづれから確定後攻のわざを使うだけで一種のコンボたり得るでしょうし、手持ちのポケモンと入れ替わることができるのは、とんぼがえりなどのわざがなかったエルレイドにとって嬉しい変更点です。
*¹ ねがいごとを覚えたエルレイドが存在しないというのは、実のところ正確ではありません。ポケモンセンター5周年を記念して、特別なわざを覚えたポケモンが生まれるタマゴを配布するキャンペーンが2003年に開かれました。配布されたのはアブソル、ピチュー、タツベイ、ラルトスのタマゴで、特別なわざというのは、アブソルとラルトスがねがいごと、ピチューがフラフラダンス、タツベイがねがいごととてっぺきでした。しかし、タマゴはランダムな上、当時はエルレイドがゲームに登場しておらず、♂のラルトスをまだ保有しているカートリッジが存在するとは考えづらいことから、ねがいごとは覚えないものとして扱っています。心当たりがある方は、一度ルビー・サファイアを再起動してみてはいかがでしょうか。
◆GCの埃をはらう
どうぐも見ておきましょう。対戦でつかえる新規追加されたどうぐは
あつぞこブーツ、からぶりほけん、だっしゅつパック
のどスプレー、ばんのうがさ、ルームサービス
以上の6種類です。
少し触れましたが、からぶりほけんとのどスプレーは特に便利などうぐであることが認知されています。でんじは、おにび、さいみんじゅつ、うたう、と相性が良く、さいみんじゅつとうたうに差別点を見いだせるようになったことは大きな収穫です。ないしょばなしで攻守ともに強化することもできます。残念なことに、有用な音わざは過去作限定であり、うたうに至ってはダークルギアまで遡る必要があります。幸いにして周回が可能であり、入手難易度がそこまで高くないため、考察の余地は多分にあるといえます。
あつぞこブーツは、個人的な感情を抜きにすればそこまで有用とは言いがたいでしょう。ただ、ペンドラー統一やダストダス統一に辛酸をなめさせられた人間であればこそ、見えてくるものもあるという話です。
インファイトを攻撃わざの主軸にするのであれば、だっしゅつパックは、しろいハーブと合わせて採用することも大いにあるでしょう。すばやさがそこまで高くないことを考えると、相手のおきみやげに対して強い回答の一つになり得ることは言うまでもありません。とはいえ、種族値80という絶妙なすばやさは、がんせきふうじやこごえるかぜなどを強烈に呼ぶため、思わぬところで発動してプランが崩壊する可能性が多いことも付け加えておく必要があるでしょう。
絶妙なすばやさは、絶妙に速いとも、絶妙に遅いとも捉えることができます。ポリゴン2のトリックルームを重く見るのであれば、ルームサービスの採用も視野に入れてもいい頃合いです。あまり実用的などうぐとは言えませんが、限定的な、あるいは特定の状況下でこそ真価を発揮できるなら、そしてその状況がおとずれることが確実視できるなら、或いは......
◆"You play with the cards you're dealt...whatever that means."
あまり多くは語れませんでしたが、剣盾期でのエルレイドについて認識を深める一助になれば幸いです。トレーナーの理解度が高まれば、その強さが際立つことでしょう。多くの中堅ポケモンがそうであるように、何をしても強いということは残念ながらありません。とはいえ、論語にもあるように、勝ちを得るために大げさな手段をとる必要はないわけです。負け筋を潰せばそれは勝ち筋へとつながるはずですからね。
いずれにせよ、リピートボール級でエルレイド統一を見かけた折には一報入れていただき、もしエルレイド統一をまだ嗜んでいる方がおられるのなら、それもまた一報くだされば幸いです。
@アット
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